学部: 他大学・他学府・他研究室の大学の大学院、企業などに進んでいます。
修士: メーカー、情報通信、ソフトウェアーの企業、環境調査会社、教員、
博士: 大学教員、企業の研究所、大学の博士研究員
工学部では具体的な技術の応用研究をする場合が多いので、 その意味で特定の企業との関係が深い場合もあり、 そのような企業への就職が有利になることはあるかもしれません。 しかし、工学部でも全ての学生が研究室でした研究と直結した部所に 就職をするわけではありません。 大学での研究とは異なる仕事につくことはむしろ普通で、 その場合、基礎的な知識や技能をしっかりと学ぶ理学部の方が、 幅広い応用がきいて選択の幅が広いとも言えます。
一般の「理学部の就職が難しい」という誤ったイメージは、 「理学部に進学した学生のほとんどが研究者や大学教員になる」という 誤解に基づくもののようです。
物理学科の学生のうち約90%が修士に進学しますが、 修士の学生の約80%が就職し、 博士課程に進学し研究者を目指す学生は、 九大の物理でも一学年10名程度以下です。
確かに、大学教員のポストはかなり限られているので、 大学のポストを目指す限りかなり厳しいことは事実です。 しかし、博士でもいわゆるアカデミックポジション(大学や研究機関の研究職) 以外の就職をする人は約50%以上いて、 その場合、企業などへの就職がいつも難しいわけではありません。
修士の就職と博士の就職は、単にどちらが有利かというよりも、 両者はかなり違った性格を持ったものだということを、むしろ認識すべきでしょう。
即ち、修士で就職した場合は、 それなりの専門技能を身につけていることは求められるものの、 基本的には入社後に企業内でトレーニングされ、 数年間で一人前になってゆくと期待されています。 一方、博士の場合にはその道の専門家として 既に自立していることが求められます。
つまり、仮に大学で研究してきた分野と異なることをすることになったとしても、 博士は自分なりによって立つところが既に確立していて、 それをもとに自分で問題の解決方法が模索でき、 更に、チームを指導できることが期待されます。
博士の学位を持って社会に出るということは、 大学の研究職につかない場合でも、 何らかの意味で独立したプロの研究者として社会に貢献するということです。
自然科学のプロの研究者が大学以外の場で活躍するということは、 これまで日本の社会では多くはありませんでした。 しかし、科学技術が高度に発達し、 それが社会の隅々までゆき渡った現代の日本のような社会では、 自然科学の深い素養を備えた研究者が活躍できる場は到るところにあるはずです。 逆に、そのような専門家集団が今後大きく育ってゆくことが、 今後、我々の社会が大きく発展してゆく上で不可欠なことだと思います。
私は、
自立した自然科学の専門家として社会に貢献してやろうという有能な若者が、
これから数多く出ることを期待します。